「物理」の意味、「physical」に引っ張られて拡張してんじゃないの説
まとめ
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日本語の「物理」には本来「物の(道)理」という意味しかなかったはず。
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英語の「physics」はほぼ「物理(学)」と対応する言葉だと思う。
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これが形容詞形の「physical」になると以下の複数の意味を持つようになる。
(1)肉体的な、(2)物質的な、(3)物理学的な
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今日、ネットスラング的に「物理で」と言うときには、本来持っていなかったはずの(1)、(2)の意味も含んでいるように思える。
だらだらとした本文
ネットスラングというか、すでに一般用法になりつつある気もするけど、「(レベルをあげて)物理で(殴る)」って言葉あるじゃないですか。
こんな感じで
直近だとアマゾンがトラックで乗り付けてデータ吸い上げるサービスのブコメ反応でも見られた。
イメージがつかみやすくてわりと好きな表現ではあるのだけども、同時に多少モヤモヤもするのです。だって、従来の方法だって物理だろと
[速報]顧客のデータセンターに大型トラックで乗り付け、100PBのデータを吸い上げる「AWS Snowmobile」発表。AWS re:Invent 2016 - Publickey
これを「物理で」という感覚はすごいわかるんだが、回線通しでデータ吸い上げるのもまた物理よね…
2016/12/01 17:15
デジタル大辞泉によれば、物理には「物の道理」とその学問「物理学」の略語としての意味しかないのである。
教えてもらったところによると、この言葉はとあるゲームバランスが非常にユニークなRPGが元になっているそうな。
従って、想定されたレベルより高ければ物理攻撃を仕掛けるだけで容易に敵を倒すことが可能になるが、
低レベルの場合は物理も魔法もダメージはおろか攻撃を当てることすら困難になり攻略は不可能となる。
2010年に出たゲームなので、この用法は比較的新しいネット スラングと言っていいと思うが、元になった「魔法攻撃」に対する「物理攻撃」という言い方は、既に違和感を感じないくらい一般的な用法だと思う。
しかし、考えてみると「剣や弓で叩く」≠「物の道理で叩く」である。
ここからは多分に推測であるが、「物理攻撃」とは「physical attack」の訳語なのではあるまいか。
physicalはphysicsの形容詞形であるので、確かに「物理(学)的」という意味はある。しかし、同時にphysicsでは持っていなかった「物質(的)の」「肉体(的)の」という意味もあり、そちらのほうがより一般的な意味でもある。
こうして見ると、剣や弓での攻撃、spiritual や mental な魔法攻撃の対応語としてphysical attackというのは非常にしっくりくる。
しかし、この物質的(肉体的)攻撃を「物理攻撃」と訳してしまったことにより、「物理」という日本語に本来は含まれていなかった「物質的」「肉体的」というニュアンスも含まれだしているのではなかろうか。
実際のところRPGの翻訳からここまで広がるとも思えないので、上記のようなphysical=物理的なという、機械的な翻訳が他にもいろいろと行われてきた結果なのでしょう。